痛みと呼吸と自律神経のかかわり

2019年2月開催 心と体の勉強会 音声テキスト No.1

*

呼吸と自律神経が深く関係している痛み

まずは痛みについてお伝えします。痛みというのは2種類あります。
一つ目は、「鋭い痛み」や「一瞬の痛み」。
二つ目は、「重い痛み」や「叩きたくなるような痛み」。
「あーっ」と言いたくなるような痛みです。

この痛みは、感じている神経線維が全く違います。
皆様のお話を聞くと、皆様の痛みは全部「重い痛み」の方です。

酸素不足による痛み

なぜ重い痛みを感じるのかと言うと、2種類あります。
この2種類のうち、一番説明が簡単なのが「酸素不足」です。
もう1つは、痛まないようにする神経がありますが、この神経が働いていません。

例えば僕は今立っています。僕は70キロくらいあります。
この70キロの重さが足の裏2つに掛かっています。
そのため、たったこれだけの面積に片足35キロずつ掛かっていることになります。

痛まないようにする神経が働いていなかったら、通常は痛みを感じます。
ところが、この(痛まないようにする)神経が働いているので痛くありません。
必要以上の痛みを、この神経が抑えるようになっているのです。
この神経が働いていないということと、酸素が不足していること。おそらく痛みにすごく困っている人は両方の可能性があります。

では「この酸素はなぜ不足するの?」と言うと、やはり「血液の流れ」と「呼吸」の問題があります。
つまり呼吸が浅くなる、または止めてしまう癖がある人は体の中が酸素不足の状態が慢性的になっている可能性が高いです。
そして、心臓を動かしたりしなくてはいけないので、そっちに酸素が取られてしまいます。

例えば足が痛むとします。これは足に行っている神経に血流が悪くなると足が痛みだします。
正座したときにだんだん痛みが出てきますよね。痛みの前にしびれますよね。
この「重い痛み」や「叩きたくなるような痛み」の軽いものが「しびれ」なんです。

つまり、痛みとしびれは一緒です。程度の違いです。
そのため「しびれるなー」と思ったのが、さらに悪くなったら痛みが出てきます。
「痛み」が「しびれ」に変わってきたら良くなってきています。
「しびれ」とは「痛み」と同じような状態だと思ってください。

呼吸と自律神経

血流と呼吸は何かと言うと、ここで自律神経が関わってきます。
自律神経は「交感神経」という神経と「副交感神経」という神経があって、交感神経は血管を細くしてしまいます。
なぜかと言うと、交感神経はストレスを受けたときに働くからです。

まず、人間のストレスは「人間関係」的なものがあります。
次に動物的なストレス。これは何かと言うと、「生命の危機」のことを言います。
例えば、僕がインパラだとします。向こうにチーターがいたら交感神経が高まります。
死ぬかもしれない、食われてしまう。
心臓がバクバクして血管を細くして、血液が速く流れるようにします。
筋肉に沢山酸素を送ります。そして、酸素はエネルギーになるので逃げることができます。
つまり、動物は交感神経を高めて逃げるために適した体にするわけです。

副交感神経は休む神経です。
ストレスばかりあると、交感神経ばかり働いて休めないというのは分かりますね。
休む神経は寝るための神経でもありますから、交感神経ばかり働くと眠れなくなります。
休む神経は回復させる神経でもありますから、回復出来なくなってしまいます。
また、症状を回復させるのも副交感神経です。

ストレスというものが交感神経を高め、血流が悪くなり呼吸が浅くなります。
リラックスした時の深い呼吸をストレス時にできるのか?と言うと、普通はできません。
そうなると酸素不足になって痛みが出てきます。

傷あと(瘢痕)と痛みの関係

では「何で右足が痛くなるの?」と言ったときに、全体的に血液の流れがやはり右足に行きにくく、血管が収縮するときに右足の方に血管が収縮しやすい癖があります。

それはいつからかと言うと、今まで生きてきた中で怪我をしたり、骨折したりすると組織の破壊が起こります。
破壊が起きたら修復します。
修復するときに瘢痕化(はんこんか)と言うのが起こります。
瘢痕化と言うのは、簡単に言うと硬くなることです。

例えば、タコができたり踵が硬くなったりすると、皆さんは削ることがあるかと思います。
硬くなったところは痛くありません。
そこには神経も血管も行っていないから痛くありません。
つまり瘢痕化というのは神経も血液も行ってない物質です。

例えばグッと腕を押されたときに柔らかければなんでもありません。
しかし硬いと深部までこの刺激が到達してしまいます。
そこに血管があったらどうでしょうか。
潰されてしまいます。
柔らかければグニャっとなる。硬いとグシャッと潰されてしまいます。

またこういうものは、筋肉の緊張が関係します。 筋肉が緊張すると言う事。実は血管も筋肉です。
そのため、血管が細くなるというのは、血管の中に小さな筋肉があってそれが収縮します。
なので、血管が細くなってしまいます。
このような収縮の癖が皆さんの体の中で起こります。
それが肩であったり背中や膝、足だったりします。

すると、収縮している箇所というのは血液の流れが悪くなり、酸素不足による痛みがでてきます。
そして、自律神経は「痛まないようにする神経」に繋がっています。
自律神経が正常に働くと、痛まないようにする神経も正常に働きます。

痛みと自律神経

脳は三層構造になっています。
まずは「大脳新皮質」。これは知識や意識の脳の領域です。
そしてその内側は「大脳辺縁系」。心や感情、記憶の脳です。 つぎに「脳幹」。これは自律神経です。
この脳幹(中脳)の部分に、「痛まなくする神経」の指令場所があります。
そのため自律神経が悪くなると、血流や酸素や痛みを制限するところも悪くなります。
このようなことから、「自律神経を元に戻しましょうね」ということになります。

痛いときに少し温めると痛みが和らぐことがあります。
これは血流が改善し、酸素が行くようになるからです。
そして「痛み」の次に「筋肉がこる」ということをよく言います。 これはいわゆる筋肉の緊張です。

緊張と震えについて

無意識的な緊張の影響

筋肉の緊張には2種類あります。
1つは「意識的な」緊張、もう1つは「無意識的な」緊張です。

1つ目の意識的な緊張は、例えばペンを持ちます。
三角筋や上腕二頭筋などと深指屈筋という筋肉が緊張して、掴んでものを上げます。
これは、意識的にやっています。

次に2つ目の無意識的な緊張は、例えば転びそうになりました。
右足が前に出ます。これは足を前に出すときに使う、大腿四頭筋や大腰筋が働いて足を前に出しています。
「転びそうだから足を前に出そう!」と考えていたら間に合いません。
そのため無意識に足が出ます。姿勢反射と言います。
皆さんが困っている筋肉の緊張のコリとは、無意識的な緊張です。
「肩を凝らすぞ!」と言うようにはやっていませんよね?コリは無意識的に筋肉が緊張してしまっています。

例えば、手の力を抜いて下さい。(と言いながら参加者Aさんの腕をつかむ)
「力を抜いていてください」と言って(私がAさんの)手を上げたときに、(Aさん自身が)自分で上げているのがわかりますか?
2割ぐらい自分で上げています。これは無意識的な緊張です。
おそらく「人に迷惑をかけてはいけない」という意識があると、私が上げようとしたときに無意識に手伝ってあげてしまうものです。

そうなると、無意識的な緊張というのが色々なところで起こります。
また、人が少し触れただけでも、実際には動いていないですが、少し緊張しているということがあります。
無意識的な筋肉の緊張は癖で起きます。
このような事が長く続くことによってコリというのができます。

筋肉の中には血管があり、神経もあります。
そのため、筋肉の緊張でギュッとなると締め付けられます。結果、血流不足が起きます。
「筋肉の緊張が良くない」という理由には2つあり、1つは血流不足。
もう1つは、筋肉が緊張しているという指令が、意識にかかわらず「小脳」に、緊張の刺激として入ります。

そして最終的に、「大脳新皮質」というところに神経が行きます。この大脳新皮質は「意識する」ところです。
小脳は意識できませんので、僕らの中では「無意識」です。
大脳新皮質まで行くと意識します。その時に、筋肉が緊張します。
つまり、筋肉が緊張していると、心も意識も緊張します。
緊張には順番があり、筋肉が最初に緊張します。

震えのメカニズム

例えば、登壇される人が震えることがあります。
心理的な緊張が筋肉に伝わって血管を細くします。
その意識が大脳や前頭葉に行って意識をすることで、余計に相互作用が働き、緊張して体が震えていきます。

震えは重要です。震えというのは、体を動かす働きと体を抑える働きが同時に起きることです。
体を動かすことで筋肉が緊張し、体を抑えることで筋肉が緊張して両方の筋肉が緊張します。

例えば、腕を使ってペンを持ち上げます。
このとき、スムーズに肘を曲げて持ち上げることが出来ます。
これは、上腕二頭筋が働いて、肘を曲げることが出来るからです。

上腕二頭筋が働くと、拮抗する、肘を伸ばす働きをもつ、上腕三頭筋は緩みます。
上腕三頭筋が緩まないと、上腕三頭筋は肘を伸ばす筋肉なので、上腕二頭筋を使って肘を曲げようとしたときに拮抗する上腕三頭筋も緊張すると、肘を曲げる筋肉も伸ばす筋肉も働くので震えがおきます。

これに似た、筋肉を緩ます神経があります。
専門的にいうと「抑制系」という神経があります。
「GABA(ギャバ)」は聞いたことありますか?GABAは筋肉を抑制させるときに出される神経伝達物質です。
アドレナリンやアセチルコリンは力を入れさせるための神経伝達物質になります。
力を抜かすためにはGABAが出ます。
ちなみに残念ながら、GABAを飲んでもGABAが増えるわけではありません。


自律神経