精神的ストレスを生む「仮面」とは…

2019年9月開催 心と体の勉強会 音声テキスト No.5

No.4では、疲労回復のしくみや、体力をつける方法についてお伝えしました。
ここでは、私たちがかぶっている「仮面」の話をしながら、仕事のストレスや精神的なストレスに対処する方法について、お伝えしていきます。

人はみな「仮面」をかぶって生きている

仕事のストレスへの対処法

参加者Cさん「どうしても避けられない仕事のストレスに対して、どうやって対処していけば良いのか…」

それは精神的なストレスですか?それとも体力的・肉体的なものですか?

参加者Cさん「精神的です」

精神的ストレスの場合はですね、さっき言った「抑圧」がありますね、必ず。
なので、自分の感情…交感神経の感情、副交感神経の感情、これを「刺激」に持ってくるんですね。

だから、泣ける映画を観るというのも刺激ですよね。
スタジアムなどに行って野球観戦して「ワーッ!!」とやることとか。
自分の気持ちが乗る方が良いので、「野球があんまり好きじゃないな」というのだったら野球じゃなくて良いんです。
自分の好きなものを。
仕事で発散するというのは無理ですから。

参加者Cさん「仕事以外のもので発散できるようなものを見つけるということですね」

そうですね。

仮面をはずせる場所や関係をもつ

「仕事」というのは何かというと…仕事だけじゃないんですけど。
皆さんにいろいろな症状があって、この「精神的ストレス」が加わるというのはどういうことかというと…「仕事」というのは「仮面をかぶっている」んですよ。

簡単に言うと、本当の自分じゃないんです。
仕事以外にも、家事というのも仮面です。
良いお母さんでいる。
良いお父さんになるために、疲れていても公園に子どもを連れて行ったりするわけですね。
家事をするのもそうですし、仕事であれば、「○○会社の●●課の課長」とかそういう仮面をかぶっているんですね。

それ以外にも僕らはいろいろな役割っていうのを社会で持っていて、それに合わせた仮面を作っていて、それに合わない感情というのを抑圧するっていうことが起きているわけです。

なので、「仮面をかぶらなくて良い場所」を作るというのが、つまり、今言ったことなんです。
そういう場所、あるいは人間関係というのを作っていくということがとっても大事なことなんです。
別にひきこもっていても良いんですよ。
でも、最終的には仮面というものをかぶらなくても良い場所とか人間関係、2つ揃えば最高ですけど、そういうものを作っていって、抑圧が多い時にはそういうところに行く。

ストレスでお酒を飲み過ぎるのは…

ところで、なぜお酒を飲み過ぎちゃうかというと…

脳というのは3層構造になっているんですね。
いちばん内側を「脳幹」と言います。
真ん中を「(大脳)辺縁系」と言います。
外側を「(大脳)皮質」と言いますね。

で、仮面というのは「皮質」で起きているんです。
ここは、霊長類がいちばん発達している脳です。
トカゲなんてもうほんのちょっとしかないです。
脳の表面積で言うと、全体の90パーセント以上が皮質です。

「仮面」とか「秩序」とか「ルール」とか「伝統」とか「枠組み」とか、人間社会を構成するうえで良しとされるものが、皮質の機能でやられているんですね。
脳幹は、心臓を動かしたり呼吸をコントロールしたりしています。
辺縁系は、「心」にあたるところですね。
いわゆる感情ですね。

アルコールを飲むと、この皮質、仮面をかぶっているこの皮質という部分がまひしてくるんですよ。

ここは川崎ですけど、あっちのお店の多い通りでは(お酒を飲んで)騒いでますかね。
あんまり昼間に奇声を上げる人はいないですよね、秩序、仮面をかぶっているわけですから。
でも、夜になってお酒を飲んで皮質がまひしてくると、ストレスに対する怒りとかをわーっと言いたくなる。
スポーツバーみたいなところでお酒を飲みながらサッカーとか野球とかを応援しているのは、とっても良いことですね。

そうやって自分の仮面を少しまひさせてやるっていうのが良いんですけど。
あとは、そればっかりやっていると、「アルコールを飲まないと(仮面を)まひさせられない」という風になっちゃうんです。

むしろ「自分からはずす」ということも重要なんですね。
自分からはずすくせをつける。

仮面をはずせないとストレスも緊張もとれない

ずいぶん前の話ですけど、僕の患者さんで、大きな会社の部長さんまでやった方で、60歳過ぎて定年になったんですけど。
定年退職しても、「部長さん」なんですよ。
いつの間にか仮面がはがれなくなっちゃったんですね。
家でも「部長さん」をやっているから…奥さんもいらしてたんですけど、奥さんのストレスもすごいことになっていました。
仕事では当然部長の仮面をかぶらなきゃいけないんですけど、家では部長の仮面を取って、いち個人として生きていくということが重要なんですね。
怒るときもあれば悲しむときもある。

なので、仮面をいかに外していくか。

仮面には必ず感情の抑圧がありますから、筋肉も必ず緊張しているんです。

「仮面」「抑圧」「緊張」というのは3点セットです。
なので「(体の)緊張が強い」というのは、仮面をかぶり続けているという可能性もあるんです。

例えば「いい人」の仮面とか。
いい人ほど、体や心にきているんです、ストレスが。
なので、筋肉を緩める必要もあるってことは、この抑圧した感情を外に出すということも必要で、それは仮面をとることなんですよと。
でないと、緊張ってなかなか取れないんです。