うつ・自律神経失調症と胃腸の障害

更新日:2011.07.01

執 筆:整体師 飯島淳

自律神経と胃腸の関係

あなたは、内臓(臓器)を動かすのを自分の意志で出来ますか?

  • ちょっと胃を働かせようかな
  • 少し疲れたから心臓を止めておこう!

などと意識的に考えて臓器を動かすことは出来ませんよね。臓器はあなたの意志とは関係なく、無意識でいつも動いているのです。

では、臓器が単体で勝手に動いているのかといえばそうではありません。勝手に動いていては、各臓器の調和は取れません。自分の無意識とはいっても、無意識で動く自律神経によって支配せれています。

様々な状況に合わせて、自律神経が動いてくれているのです。自律神経の指令は、脳から送られてきます。自律神経失調症やうつのような場合は自律神経の乱れなどがありますから、通常のように、各臓器にも指令がこないことがあります。

状況に合っていない指令がきたりします。このような状態によって、自律神経失調症やうつのケースでは、胃腸障害など各臓器の不調が出てくることがあるのです。

自律神経とは?

簡単にその仕組みをお伝えいたします。

自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経とは、緊張したり運動をしたり、ストレスを受けている時などに多く働きます。副交感神経は、リラックスした時や睡眠時などの時に多く働き、体を修復する神経です。

交感神経の時は、運動や緊張・興奮などの時なので体は臨戦体制になっているような感じです。この時は体に力が入って戦う・逃げるために筋肉に血流が多く行きます。
胃や腸などに血流をのんびりと送っている場合ではないのです。消化管の運動や消化液の分泌などは抑えられてしまいます。緊張して食欲がなくなったことがあるという方も多くいるでしょう。

副交感神経は逆で、食事の準備を整えてくれます。胃腸への血流がまします。
唾液が出て、消化管の運動が盛んになり消化液も分泌されて消化吸収がスムーズに行きます。胃腸にとってはいいことづくしのようですね。胃腸を働かすには、良い副交感神経が働くことが大切なのです。

このようにストレス時など、交感神経が優位に働いている時には胃腸などの不調が出てくるということが多くみられる訳です。ストレスなどがあれば、薬を飲んで済ますだけではなく、原因となりうるストレスを上手く減らすことも大切になってきます。
胃は第二の脳などともいわれるぐらい、ストレスなどの自律神経の影響は受けてしまうのです。

この自律神経の交感神経と副交感神経、二つの働きがシーソーのように、どちらもバランス良く動いていることが胃腸にとっても重要になってくるのです。

食べて消化する仕組み

人間が生きて行くのには、必要量の食事をしてその栄養素を体内に吸収して体を保つというとこをしていかなければなりません。毎日食事に費やす時間は誰しもあるかと思います。

例えば、病気をして「ずっと食べていないと体に力が入らない・・」というような体験をしたことがあるかと思います。元気であれば、「お腹が空いた」という反応が出てくるでしょう。どんな人でも食べ物が体のエネルギー源であることは間違いありません。

しかしたくさん食べればいいかというとそうではないのです。あくまでも必要量を取るということが重要なのです。最近では、無理なダイエットをしてその必要量に全然満たなくて体を壊す原因になっている人もいます。やはりエネルギーがなくなれば体は上手く動きません。

食べることの役割

では、人間は毎日食べ続けることで栄養素を取り入れている訳ですが、その役割は大きく分けて3つあります。

  • 体のエネルギー源
  • 細胞などを作る材料
  • この二つからの栄養素を利用するに為に体のしくみを調整する

というような、3つの働きがあるのです。

食べ物は当然ですけど口から入ります。口から入って・食道・胃・小腸・大腸に流れていくのです。これを、「消化管」と呼びます。
さて、この消化管ですが一本のホースのように食べたものが流れていきます。

口から食べ物を入れた時に、体内に入れたと普通考えます。しかし、一本のホースですので水が流れて行くのはその中です。つまり、ホースの一部になってはいないのです。食べ物もただ流れていくだけでは体内に入れたとは言えないのです。通過していく過程の中で吸収が行なわれます。この時に始めて体内に入ったと言えます。

食べ物の栄養素は消化管から分子レベルにしてからでないと吸収できません。体は細胞で出来ています。その細胞が栄養素を取り入れる為に分子レベルまで分解する必要があるのです。これを「消化」といいます。
それでは、その消化していく過程の仕組みを説明していきます。

食べ物は口から入ります。食べ物を入れたら噛み砕いて小さくしていきます。これを、「咀嚼(そしゃく)」といいます。咀嚼をする目的は物を小さくして飲み込むためです。この物を飲み込む作業を「嚥下(えんげ)」といいます。

嚥下をするときは、呼吸をして肺に酸素を流す時に使用している気管を封鎖しなくてはなりません。嚥下の時には、気管を自動的に閉じてくれるシステムがあります。
これを「嚥下反射」といいます。この動きが自然に起こらないと、物を入れた時にむせたりしてしまうのです。

咀嚼をするときには、唾液が分泌されます。唾液がでることによって、口の中を滑らかにして飲み込みやすくしています。唾液には、アミラーゼという消化酵素が含まれています。これは、でんぷんを分解してくれます。このときに糖が増えるのです。
よく噛んでいると甘味を感じるのはこのせいです。

そして、唾液には他にも、リゾチームという物質も含まれています。これは、殺菌作用があります。口の中をいつも衛生面で清潔に保っているわけです。犬などの動物が、舌で傷口をペロペロと舐めているのを見たことがあるかと思います。あれは、傷口をこの物質で殺菌消毒しているということです。人間はそこまで殺菌作用が強くはないので、虫歯になったりしてしまうのです。

口から入った食べ物は、食道を通過して胃に到達します。
胃の最大の役割は、胃の中に一時的に食べ物を貯めておくということです。
極端にいうと、胃が無くても生きていかれる訳です。消火機能では、どうしても必要な臓器ではないのです。胃を全部摘出して無いひとも食事を少量ずつですけれど摂れるのです。

では、食べ物が胃に入って来てからどのような働きをするかというと、平滑筋という筋肉がゆるみ胃の中を広げてくれます。これでどんどん食べ物の受け入れ態勢が整うのです。食事の際に、食べ物や空気中にある雑菌が付着していてそのまま胃の中へと入ってきます。

食べ物は、胃の中では暖かくて雑菌が繁殖し腐敗やすい環境となっているのです。
そこで、それを防御しなくてはなりません。胃の壁には無数にある小さな分泌腺の胃腺というものがあります。そこから胃液を出すのです。胃液は非常に塩酸です。この酸を胃酸と呼びます。

胃酸は殺菌能力が高いので、胃に入ってきた雑菌を殺してくれるのです。
この胃酸の働きが極端に悪くなってしまうと、食べ物の腐敗などが起こり消化吸収がスムーズ出来なくなってしまいます。胃腺のもう一つの副細胞は、粘液を分泌して酸などに胃壁が破壊されないように保護してくれているのです。胃酸の分泌多すぎや粘液の分泌低下だと胃潰瘍になります。

さて、胃の中で食べ物を停滞させておく時に、胃の終わりの部分の幽門部と呼ばれるところが狭めていて、出て行かないようにしてくれています。
必要に応じて少しずつ開いてくれます。食べ物を十二指腸へと送りこんでくれるのです。

十二指腸に流れていくのには、胃の中で食べ物を粥状または液状にしなくてはなりません。その働きも胃の中の分泌物によって行います。

十二指腸

十二指腸が消化吸収の流れでもっとも重要な臓器なのです。
他の臓器よりも名前は有名ではありませんが、胃の全摘手術などはあっても、十二指腸の全摘手術は実施された例はないということです。それほど大切な訳です。

さて、この十二指腸には、膵臓から膵液が、肝臓から胆のうを経由して胆汁が流れてきます。胃の中は強い酸性なのでそこから酸性の物が十二指腸に流れてしまうと粘膜がただれてしまいます。そこで、膵液が必要なのです。

膵液はアルカリ性です。胃から流れてきた酸性のものを中和してくれるのです。腸では、腐敗の心配がないので酸性に保つ必要がなくなっているという訳です。そして、脂質も流れてくるのです。油は水に溶けてくれません。膵液は脂肪を分解する酵素を持っていますが、すでに水に溶けているのです。それでは脂肪の消化には相当の時間がかかってしまうし、消化出来るかも分かりません。

そこで、脂肪を細かくしてくれるのが胆汁です。胆汁は、肝臓で作られて胆のうにやってきます。十二指腸に物が来たときに胆のうから流れてきます。そうでない時は、胆のうにストックしておいてくれるのです。胆汁を簡単にいうと、食器を洗う時に使用する石鹸のようなもので油を分解してくれているのです。
ちなみに、指を12本並べた大きさだということで、十二指腸とも呼ばれています。

小腸

膵液と胆汁で中和された粥状のものは、十二指腸から小腸へと運ばれて行くのです。
そして、炭水化物は二糖類に、脂肪は脂肪酸とグリセリンやモノグリセリドに、たんぱく質はペプチド・トリペプチドに分解されます。

しかしこれだけ小さくしてもまだ腸は消化してくれません。粘膜にある上皮細胞という細胞膜上で消化分解してくれます。
そして、その細胞膜上から消化されたものから吸収されていくのです。

ここの小腸で始めて栄養素は吸収されていきます。ここで始めて体内に栄養素は入ったとも言えるでしょう。そして、上皮細胞から吸収されたアミノ酸や単糖類は、血管内に進入してその血液は肝臓へと運ばれていきます。

大腸

ここでは、もう消化するのではなく小腸から送られてきた消化液の水分と電解質を吸収して便を作るのです。大腸菌やビフィズス菌などが小腸で消化しきれなかった糖質・たんぱく質・脂肪などを分解・吸収してくれるのです。そして水分や塩も吸収。
残ったものは15~20時間で水分が少なくなって固くなります。
そして、だんだん濃縮して便として直腸・肛門から出ていくのです。

大腸は蠕動運動をあまりしないのですが、食べ物を食べて胃が膨らむと蠕動運動が始まります。これを胃大腸反射といいます。排便の準備が整うと肛門括約筋が弛緩して便が肛門から出られるのです。便意を我慢してしまうと、水分がまた吸収されて固くなります。
これによって、便秘の引き金になることもあります。

以上が食べ物を食べてからの消化吸収、排便の流れになっています。
各臓器が連動して働いてくれているので、毎日食事をして体を作りあげていけるのです。どの臓器も不具合が起きると、他に影響が出たりします。

それでは次の「逆流性食道炎・胃炎・胃潰瘍の原因と対策」のページで、うつや自律神経失調症の際に、消化管の臓器でよく出てくる症状をあげてみます。